同レベルでつるむことの弊害はまだまだあります。
それは、手軽に承認を得られてしまうことです。
何かを創ったり、パフォーマンスしたりすると、仲間からは「よかったよ」「面白かった」などと概ね承認(称賛)が得られます。
まあ、これがだいたい本音でないことは大人になればわかりますが、わかっていてもやっぱり嬉しくなってしまうからたちが悪いんです。
アーティストを目指す人間は、間違いなく全員承認に飢えています。
自分を認めて欲しい、褒められたい、うらやましがられたい……だから音楽や小説など、しんどいものにわざわざ手を出し、苦労して技術を身につけ、人前で披露するのです。
特に、まだ一人前になっていない人は、承認されたくてされたくてもうカラカラに乾いている状態です。
そこへ一言「よかったよ」「面白かったよ」と言ってくれる人が現れたらどう思うでしょうか?
まるでその人が天使や女神のように見えるでしょう。
そして、心が一気に潤うと同時に、お返しにその人の作品を褒めたり、ライブを観にいったりし、自分も同じように褒め返すでしょう。
もうこうなったら抜け出すことはできません。
後は仲間内でつるんでお互いを褒め合い、同時に以前説明した監視と拘束のシステムを発動し(下記参照)、抜け駆けされないように牽制しあいながら狭い世界で活動していき、やがては内部抗争や派閥争いで崩壊していくのが同レベルの集まりの末路です。
仮にそうしたグループへの拘束が発生しなかったとしても、手軽な承認は自分を簡単に満足させてしまいます。
そりゃそうですよね、承認されたくてされたくてうずうずしているところにポンと承認の言葉が投げかけられたら、もう全ての努力がそこで報われた気がして、心底安心し、満足してしまうのは仕方ありません。
そして、それを手放したくない、もっと承認されたいという欲求から、手軽に承認してくれる人(だいたい同レベル)とつるみ出すのでしょう。
そうした状態を自力で抜け出すのは、ほぼ不可能に近いです。
そこで2で説明した上層の住人が必要となってくるのです。
上層の住人に無理矢理知らない景色(今よりも高いところ)を見せられたら、最初はショックでも、アーティストとしてレベルアップするためにはそこに上がらなければならないという気持ちが芽生えてくるはずです。
そうやって、無理矢理にでも今いるところ、今つるんでいる仲間よりも上の層が見えてしまえば、多少骨のある人なら手軽な承認を一度ふりきって、また上に上がる努力ができるでしょう。
とはいえ、アーティストにとって承認とは、猫にまたたびのようなもので、これが嫌いという人は絶対にいませんからね……。
だから手軽な承認をいつまでも手放せず、気がついたら取り残されてしまったという人も多いはずです。
まあ、それでも惰性で仕事ができる業界もありますけど……
上層の人間との付き合いがあっても上を見られない人もいるということは、結局は自分次第なのでしょう。
(シリーズ終り)