「楽器をもっと練習したいけど……」
そう言う人はたくさんいます。
そして彼らは、楽器が練習できない理由を即座にいくつも挙げられます。
時間がない、疲れた、何を練習したらいいのかわからない、遠回りしたくない、などなど。
そして、話はそこで終わります。
時間がないなりに何を工夫しているのか、疲れが出やすいのなら疲労回復をどう行っているのか、練習内容はどうやってリサーチしているのか、といった話はまず出てきません。
それもそのはずで、そういった工夫をしている人は既に練習をしている人だからです。
ここで大事なのは、「練習したい」と「練習している」の違いです。
普通に考えれば、「練習したい」という欲求があり、次に「練習している」という状態があると思います。
が、実際はそうではありません。
練習している人は、「練習したい」と思うよりも先に練習をしています。
実際に練習をするまでに、「練習したい」とか「練習しなきゃ」というクッションを入れている人は、極論すると練習したくないのです。
『いや、練習はしたいけど、失敗や回り道を避けたいだけだ。だから慎重になっているんだ』と仰る人もいるかもしれません。
そう、それが正に「練習したくない」ということです。
失敗や回り道をしたくないということは、言い換えれば、人より多く練習したくない、練習時間をできるだけ短くしたい、できるだけ楽をしたいということですからね。
本当の意味で「練習したい」人は、人より多く練習できることが喜びになるし、回り道や失敗などを考える前に動いているし、実際そういった困難もむしろ歓迎できるはずです。
さて、練習したいけどできない理由をひとつでも挙げられる人は、はっきり言うと練習なんかしない方がましです。
たぶん、その状態では何も身につきません。
中途半端にやるくらいなら、ある種のショック療法として一切練習をやめてしまったほうがいいでしょう。
そして、「練習したい」とか「練習しなきゃ」をすっ飛ばして、無意識的に楽器を持って弾いてしまうぐらいになるまで待ちましょう。
一度完全に練習から離れてみると、意外と頭が整理されて、やりたいことが湧いてきたりします。
まあ、そこでいくら待っても練習する気にならなければそれまでということです。