ジャズには独特のリズムがあります。
それがスゥイングです。
分からない場合は、シャッフル(タッカタッカと跳ねるリズム)と似たようなものだと思ってもらって結構です。
このスゥイングがジャズをジャズたらしめている重要な要因なのですが、それぞれの楽器で習得するにはなかなか苦労します。
そんな中で、ギターという楽器は、とりわけスゥイングし辛いという性質があります。
何故かをご説明しましょう。
まず、ギターという楽器はピックで弦をはじいて音をだす、ということは誰でも知っていると思います。
そのピックを、弦に対して往復させて演奏します。
いわゆるオルタネイトピッキングです。
この往復運動(オルタネイトピッキング)がくせ者なのです。
例えば、うちわを顔の前で仰ぐとします。
このとき、往復運動が行われるわけですが、普通に振れば自然と同じ距離を同じ速度で往復しているはずです。
また、地面に線を引いて、それを左右にジャンプするとしたとき、やはり自然と同じ距離を同じ速度で往復するはずです。
ギターの場合も同じです。
弦をピックで往復する際、自然と同じ距離を同じ速度で行って帰ってとしてしまいます。
このとき、リズムはイーブンとなります。
「イーブン」とは、全く跳ねないリズム、そう、スゥイングとは対極にあるリズムです。
これがギターの最も自然な弾き方となるのです。
では、往復運動でスゥイング、あるいはシャッフルなどの跳ねたリズムはどう作るのか?
最も一般的な方法は、ダウンピッキングした後に一旦タメを作り、そこからダウンのときよりも素早くアップピッキングをします。
このとき、ダウンよりもアップの方が速度が速くなります。
こうすることでタッカタッカという跳ねたリズムが生まれるのです。
しかし、これは往復運動としては不自然です。
ですから、人は無意識的にタメをなくして同じ速度で往復しようとしてしまいます。
これがギターにおけるスゥイングし辛さの正体です。
考えてみれば、ジャズで演奏される楽器はギター以外往復運動をする必要がありません。
エレキベースもジャズなら100%指引きですからね(その場合指は弦を往復せず、必ず一方向に向かって弾きます)。
やはりギターは、ジャズに対してディスアドバンテージを持っているようです。
しかし、それでもピアノやホーンなどのレジェンドプレイヤーに負けずしっかりとスゥイングしている昔日のジャズギタリストたちは、やはり偉大なジャズミュージシャンであったといえるでしょう。
プロアマ問わず、現代のジャズギタリストは、「ピアノみたいなヴォイシングを」とか、「一人でベースもハーモニーも弾けるぜ」とあれこれ試す前に、シンプルにもう一度スゥイングについて考えてみるべきではないでしょうか?
ただでさえスゥイングし辛い楽器なのですから。