ジャズは背伸びの音楽です。
若者はもちろん、30代、40代でも、背伸びをせず自然にジャズを聴き、ジャズバーに気軽に入れるという方は少ないと思います。
今現在日常的にジャズに親しんでいる方も、最初は相当背伸びをしたはずです。
もちろん、僕も背伸びの連続でした。
その背伸び自体が格好いいと、少し前までは皆思っていました。
しかし、昨今では「ありのままの」という歌詞に象徴されるように、等身大の自分を積極的に肯定し、背伸びすることをある種否定するような風潮があります。
若者は「さとり世代」などと言われ、酒、ギャンブルはやらない、車も欲しくない、収入は普通に暮らせるだけあればいい、さらには彼氏・彼女さえいらないという方も多いと聞きます。
ネットでは普通の人間が日常の出来事を話し、ベッドルームで楽器を弾いたり踊ったり……。
アニメやラノベの主人公はどこにでも居る普通の人間。
中には、自分では何もせず、ただヒロインに守ってもらう主人公さえ存在します。
恐らく、背伸びという行為自体がもうダサいし、疲れるんでしょう。
そんな世界観に生きる今時の若者が、わざわざ背伸びをしてジャズを聴くわけがありません。
ましてや、ジャズの現場には、彼らの大嫌いな老害たちがうようよいる始末です。
一方で、全国各地で行われているジャズフェス、ジャズストなどには若者も足を運んでいるようです。
実際、僕も何度かそういったところで演奏したことがありますが、お客さんがおじさんおばさんだらけだったということは一度もありませんでした。
そして、普段ジャズを聴かなさそうな方たちも、演奏を楽しんでくれていました(そういった方達の方がジャズファンより反応がいいんですよね)。
地域密着型のジャズフェス、ジャズストに若者も来てくれるのは、恐らく背伸びをする必要がないからでしょう。
よく知ってる商店街のあの店で無料で聴けるなら、ジャズとかいうよくわからん音楽も試しに聴いてみようか……そういった潜在的ジャズファンは多いと僕は思います。
それならば、こちらから歩み寄ったりはしごをかけてあげたりして、若者が背伸びせず気軽に足を運べるような企画を打ち出していけば、自然とジャズを聴きに来る人も増えるのではないかと思います。
「ジャズが聴きたけりゃ大人になりな」とニヒルに構える時代は終わりました。
そんな人に憧れる若者はもういません。
「ちょwww昭和wwww」と影でクスクス嗤われて距離を置かれるだけです。