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ジャズに人が集まらない理由 14 ハーモニー進化論がジャズを停滞させている原因


八幡謙介ギター教室in横浜

ジャズミュージシャンは、おおよそ次のような思想を持っています。

 

ハーモニーは進化しなければならない

進化するハーモニーの最先端にいるのがジャズである

 

これを「ハーモニー進化論」と呼びます(僕の造語です)。

この「ハーモニー進化論」こそが、ジャズという音楽を停滞させている原因ではないかと僕は推察します。

 

「ハーモニーは進化しなければならない」という考えは、バップ黎明期からのジャズの伝統を踏襲した理念であり、ある意味ジャズそのものの存在意義とも言えるでしょう。

しかし実際に、進化した最先端のハーモニーを取り扱うコンテンポラリージャズ(この言葉がもう古いんですが)は、現状どうなっていますか?

僕には停滞して身動きが取れなくなっているように見えます。

最先端のハーモニーを扱うコンテンポラリージャズは、僕も含めて、ジャズミュージシャンでも苦痛で聞いてられないという方が多いです。

やってることがすごいのは分かりますよ、でも純粋に楽しめないし、本当にそのハーモニーが必要なのか、はなはだ疑問です。

僕には、最新のコンテンポラリージャズは、リスナーを楽しませることが目的ではなく、ハーモニーを進化させることが目的で曲を作っているような気がしてなりません。

だとすればそれはもうエンタテイメントではなく実験です。

そんな音楽(?)に人が集まらないのは当然でしょう。

そもそも、ハーモニーは進化しなければならないものなのでしょうか?

 

 

おおよそ1930年代から60年代半ば頃まで、ジャズミュージシャンたちはハーモニーの地平を切り開いてきました。

スケールアウト、極端な転調、モード、そしてフリージャズ……この時期に現代的なハーモニーの基礎から応用、果ては反則技まで出し尽くされたといっても過言ではありません。

この時代のジャズのコード理論を熟知していれば、現代的なポピュラーミュージックは十分作れます(もちろんアレンジなどは別ですが、楽曲の骨子は十分作れます)。

先人たちは、それぐらい高度にハーモニーを発展させてきました。

では、何故彼らはそうしてきたのでしょうか?

それは、単純に「なかったから」だと思います。

パーカーもコルトレーンもマイルスもコールマンも、それまでにない新しいものが作りたかったから、極端な転調やモードやフリーを始めたんだと思います。

そして、彼らが生きた時代は、幸い音楽的には「ない」ものが多い時代でした。

 

 

ハーモニー進化論を唱える現代のジャズミュージシャンは、ジャズ黄金期を規範とし、彼らの精神を受け継ぐこと=ハーモニーを進化させることだと解釈しているように思われます。

しかし、ロックさえ生まれていなかった時代と現代では状況が異なります。

ハーモニーの実験は基本から応用、反則まで既にやりつくされています。

そこから無理をしてさらに進化させようとするから極度に難解になり、エンタメ性も失われていくのではないでしょうか?

ていうか、受け継ぐほど高尚な精神がジャズにあったのか?

ジャズファンなら、彼らのほとんどがジャンキーで、女ったらしで、どうしようもないクズだったことは知っているはずです。

そんな人たちの精神を真面目くさって受け継ぐ必要があるのか、疑問です。

 

ジャズは歴史が長いので、やればやるほど伝統とか、受け継ぐとか堅苦しい考えを持ってしまいますが、現代に即した演奏――ある意味大衆迎合こそが一番ジャズの精神を受け継いでいるのではないかという気すらします。

「進化させなければならない」という固定観念こそが思考の「停滞」ですからね。

それに、よく考えたらジャズジャイアンツたちがやってたのは当時の最新の音楽ですし……。

 

 

ジャズミュージシャンは、ひとまずハーモニー進化論を捨ててみればいいんじゃないかと僕は思います。

そうすれば、自分たちが最先端だという変なプライドがなくなっていくのではないかと。

とはいえ、それをしてしまうとジャズの世界では全く評価されなくなってしまいますが……。

人が集まらないジャズの世界での評価を求めるのか、一般大衆からの評価を模索するのか、選択は自由です。

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