八幡謙介ギター教室in横浜講師のブログ

ギター講師八幡謙介がギターや音楽について綴るブログ。

ジャズに人が集まらない理由 10 ライブが流れ作業になっているから


八幡謙介ギター教室in横浜

ジャズのライブは、ロックや他のジャンルと決定的に違います。

今回はそこにある問題を提起したいと思います。

 

ジャズライブの一般的な流れは、だいたいこのようになっています。

 

あるミュージシャンからライブに呼ばれる(共演者、演目などは当日まで分からない、リーダーも決めてない)

当日決められた時間に会場入り、楽器のセッティング

リーダーから譜面をもらって軽く打ち合わせ(ベテランになると譜面も打ち合わせもない場合もある)

本番

 

だいたいこんな感じです。

現場にPAがいることもまれなので、打ち合わせは本当に簡単に終わります。

上記の本番までの全行程がだいたい1時間ぐらいでしょうか。

これ以外に、本番前にどこかのスタジオで全員集まってリハするなんてことは、少なくともローカルクラブやレストランなどの演奏ではまずありません。

それだけ、ジャズミュージシャンは読譜力と即興での対応力が高いのです。

ジャズミュージシャンが毎日のように演奏しているのは、このように、リハを極端に省略している(それでも成立する)からです。

 

 

しかし、こうした過程での演奏では、楽曲を深く理解し、1曲1曲に心を込める時間がありません。

ただただその現場の演奏を成立させることで精一杯です。

そして、その現場が終わればまた次の現場に行き、新しい曲をもらい、どうにか演奏を成立させる……。

ジャズミュージシャンはおおむね、こうやって動いています。

そして、この流れ作業がスムーズにこなせる人ほど仕事に呼ばれます。

「この10曲なら誰よりも味のある演奏ができるが、他の曲は弾けない」では仕事にならないのです。

 

ジャズの演奏は、一般の方からすると、どこか他のジャンルと違って淡々として見えるようです。

熱気が足りないというか、よそよそしいというか……。

それもそのはずです。

だって、作業なんですからw

もちろん、初見の楽曲で心を込めて、熱いプレイが出来る人もいるんでしょうが、そういった人はごく一部です。

自分では熱いと思っていても、お客さんから見たら淡々として見えるってこともありますしね。

 

 

僕自身ジャズをやっていた頃を振り返ってみても、演奏していたというより、現場を成立させるための「作業」をしていたという印象しか残っていません。

1回1回のライブで、本当に心を込めて演奏できていたかというと、疑問です。

しかし、それも仕方ありません。

ジャズの現場ではいちいち楽曲に心を込めている時間がないんです。

数百曲は知ってたスタンダードも、とにかく覚えるのが先決で、歌詞をまともに読んだこともありませんでした。

怖いのは、一般の方はこういったミュージシャン側のマインドや、姿勢をすべて見透かしているということです。

楽器ができないからと舐めていると、必ず痛い目をみます。

僕も一度お客さん(楽器は弾けない方)から、「あなたは観客のことをどう思ってるの?」と言われて背筋が凍り付いたことがあります。

そのライブも正に現場を成立させるためにやっていただけで、観客に対して心を込めて演奏できていなかったからです。

あの一言はいまだに忘れられません。

 

そんなこともあり、別の要因も重なって、僕はこの「流れ作業」からいったん身を引きました。

数百曲覚えたレパートリーは全部白紙に戻しました。

もうあの作業はうんざりです。

ライブもセッションも、今はまったくやりたいとも聴きたいとも思いません。

ここからどうすればいいのかは、まだ分かりません。

ジャズは大好きなんですけどね。

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