八幡謙介ギター教室in横浜講師のブログ

ギター講師八幡謙介がギターや音楽について綴るブログ。

歌の奥にあるもの 歌は人間を通り越してルーツを明るみに出すから怖い


八幡謙介ギター教室in横浜

歌というものは非常に怖いです。

なんでかというと、歌っている人間そのものを暴き、さらにはその奥にあるルーツまで明るみに出すからです。

説明はいいので、実際に聞いてみましょう。

ビコマナ「ロビンソン」

まずはおなじみ、スピッツの「ロビンソン」。

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これが、アフリカ人が歌うとこうなります。

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はじめて聞いたとき、びっくりしました。

あの「ロビンソン」がこんなにカラっと乾燥し、広大な大地をイメージさせる歌になっているからです。

といっても、アフロポップアレンジをしているわけでもアフリカの民族楽器を使っているわけでもなく、アフリカ的なイメージを映像に盛り込んでいるというわけでもありません。

アフリカ人の普通の子がただ「ロビンソン」を歌っただけでここまで曲が変貌してしまいます。

技術や視覚情報ではなく、また、人間個人の個性だけでなく、アフリカという大きなイメージがちゃんと歌から見えてくるところが面白いし、怖いです。

Biko's Mannaのすごさはそこであって、歌が上手いとか発声がどうのとかいうことではありません。

歌にルーツがちゃんと出ているところが素晴らしいのです。

そこから改めてスピッツを聞くとめっちゃ日本です。

当たり前ですが。

台湾人が歌う「島唄」

で、これを聞いていたらふとある動画を思い出したので貼っておきます。

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これを台湾の歌手、張恵妹(A-Mei)が歌うとこうなります。

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僕には大陸っぽい匂いを感じます。

もちろん台湾人ですから島国のはずなんですが、どう聞いても島感はなく、中国の広大な景色が浮かんできます。

これも変に中華っぽいアレンジをしているわけではなく、どちらかというと原曲に近い感じで演奏しているんですが、なんでなんでしょうね?

ちなみに台湾にもいろんなルーツの人がいて、この張さんはたしか台湾に昔からいる少数民族出身だったはずです。

でもやっぱり大陸感がします。

 

一方Boomは山梨県のバンドですが彼らの「島唄」は島感があります。

でも沖縄の人からしたら違うんでしょうね。

そういえばBEGINや夏川りみと比べたらパリっとしすぎた感じがあります。

本土の観光客がイメージする沖縄(の綺麗なところだけ)という感じがしないでもない。

やはりルーツというものはどうしても出てしまうものらしいです。

特に歌は。

biko(アフリカ人の子)みたいにルーツがバーンと出ている人は、もう何歌っても自分の歌になるんでしょう。

一方、ルーツに抗っていたり、変に技術で隠そうとしていると、違和感を感じます。

その違和感はむしろ音楽を何も知らない人の方が如実に感じているはずです。

 

めちゃくちゃ上手いのに何の興味も持てない歌というのは、そういう歌なのでしょう。