八幡謙介ギター教室in横浜講師のブログ

ギター講師八幡謙介がギターや音楽について綴るブログ。

ギターの「枯れた音」についての考察


八幡謙介ギター教室in横浜

前回「音が太い」について書きましたが、ついでに今回はよく言われる「枯れた音」について。

k-yahata.hatenablog.com

よく、経年が進んできたギターを「枯れた音」と言ったりしますが、僕にとってはこれも意味がわかりません。

今まで25、6年ギターを弾いてきましたが、「枯れた音」を実感したこともないし、ちゃんとしたギタリストからこの言葉を聞いたこともありません。

(「鳴り」と同じですね)。

まず「枯れる」という言葉を再確認してみましょう。

 

か・れる  【枯れる】 

 ① 草木が水分を失って、生気がなくなる。 「植木が-・れる」 「花が-・れる」

 ② (比喩的に用いて)本来の勢いがなくなる。朽ちる。 「やせても-・れても武士だ」

 ③ 人柄や技芸が深みのある渋さをもつようになる。円熟する。 「 - ・れた芸」

 ④ 人・虫・魚などが死んでひからびる。 「虫などの-・れたるに似てをかし/枕草子 40」

 ⑤ 傷口がかわく。かせる。 「督の殿々御瘡-・れさせ給つれど/栄花 嶺の月」 [表記] かれる(枯・涸▼・嗄▼)

「枯れる」は“草木が生気を失う。円熟する”の意。「花が枯れる」「痩(や)せても枯れても」「枯れた芸」 「涸れる」は“水がなくなる。能力が尽きる”の意。仮名で書くことが多い。「泉が涸れる」「涙も涸れる」「情熱が涸れる」 「嗄れる」は“声がかすれる”の意。仮名で書くことが多い。「声が嗄れる」

(weblio辞書参照 https://www.weblio.jp/content/%E6%9E%AF%E3%82%8C%E3%82%8B 一部編集済み)

 

「枯れた音」とは、③の円熟を表す「枯れる」の意味かと思われます。

それ以外はギターの状態を肯定的に示す「枯れた」とマッチしません。

つまり、「枯れた音」=「円熟した音」ということだと考えられます。

 

 

では「円熟した音」って何ですか?

これもよくわかりません。

ただでさえよくわからない言葉をさらに「枯れた」と表現されても、よけいわからないだけです。

おそらく円熟の意味を表す「枯れた」は、伝統芸能の世界で使われる言葉で、そういった芸能が好きなライターが雑誌などで使い、それがちょっと通っぽくてかっこいいから一般人も使いはじめたのがはじまりではないかと推察します。

(「鳴り」だの「抜け」だのと、日本人は分かる人にしか分からない隠語をつくりたがるので…)。

 

個人的には、いわゆる「枯れた音」を「エージングが進み、安定した音」と表現されていれば、現代語として納得できます。

しかしそれを「枯れた」と通ぶった表現にするのは関心しません。

こういうのを”粋がる”というのでしょう。

 

楽器屋さんなどで「このギターは枯れた音がする」と言われたら、一度「枯れたってどういう状態なんですか?」と訊いてみましょう。

たぶん、まともな答えは返ってきません。

仮に即返答がかえってきたら、その人は自分なりの「枯れた音」観を持っているので、それはそれでOKですが。